朝三暮四ノート

C氏とT氏のためだけに書くブログ

遺恨試合

プロレスの試合にはタイトルマッチや特別試合など様々あり、その中の一つに遺恨試合というものがある。
遺恨試合では仲の悪いレスラー同士が対戦し、ほとんどの場合悪役レスラーが絡んでいる。

 

私はプロレスが大好きで、子供の頃は毎週楽しみに見ていた。
悪役レスラーが好きで、特に好きなのはタイガー・ジェット・シンだった。
シンといえば猪木との攻防がファンの記憶に深く刻まれていると思うが(新宿伊勢丹前襲撃事件、腕折りなど)、
私の中で一番記憶に残っているのは「遺恨試合!!タイガー・ジェット・シンVS上田馬之助」だ。

この二人はそれまでずっとダッグを組んでいたのだが、
前の試合で二人攻撃(反則)をしようとして馬之助がシンに誤爆、それにシンが激高、そこから両者殴り合いという典型的なパターンで仲間割れをしたのだった。
そこで、この因縁から遺恨試合が組まれることになったのだ。

 

当時小学校低学年(園児?)だった私は、タイガー・ジェット・シンVS上田馬之助新日本プロレスTV予告を見て非常に興奮。
シンと馬之助どっちが強いのか。はたまた、どんな試合になるのか。楽しみで翌週まで夜も寝付けぬ有様だった。

 

いよいよ試合当日。TV画面いっぱいに映し出された

 

遺恨試合!!

タイガー・ジェット・シン
 VS
上田馬之助

 

蔵前国技館だったか大阪府立体育会館だったか、場内の照明が消えて真っ暗になり「オーッ!」という大歓声。
興奮興奮。

 

先ずは上田馬之助の入場。
いつも竹刀を片手に入場するのだが、今日は何か違うぞ。
これは何だ?
リングに上がるとスッと鞘から刀を抜く。

 

「おーっと、これは真剣だーっ!!」

 

古館が絶叫。
スポットライトにきらめく真剣。
私は異常興奮。

 

「馬之助本気や」

 

場内のざわつきが残る中、今度はタイガー・ジェット・シンの入場。
ヒュンヒュンというサーベルが空を切る音、入場曲『サーベルダイガー』だ。

シンがセコンドと肩を組んで暴れながら入ってくる。
今日もいつもと同じくなかなかリングに上がってこない。
そのエネルギーを恨みのある馬之助にぶつけたらよいのにと思うのだが、これがシンのスタイルだ。

 

シンの手には普段と同じサーベル。
シンのサーベルの剣身は細い針金のようだ。お客さんに当たったらすぐに曲がってしまう。割とやわい印象だ。
せっかく馬之助が真剣を持ってきているのだから、シンも軍刀のような刀身に幅があって人をスッパリ切れるタイプのサーベルを持ってきて欲しかった。

 

真剣VS針金サーベル

 

「勝負あったな」

 

散々暴れ回ったシンがいよいよリングに入る。

 

始まるでー!

 

ん?
ちょっと待て。
馬之助が手に持っているのは・・・

竹刀!?

 

おい、真剣はどうした?

どこへやった真剣は? 

おいー!

どないなっとんねーん!

シンに刀で切りつけるんとちゃうんか?

血しぶき上がる大流血試合やるんとちゃうんか?

竹刀じゃ人は切れへんやないかー!!!!!!!!!

  

ここでカイアモン少年、我に返る。

 

「まあ・・・ほんまに切ったらあかんわな」

 

この後の試合内容は、ゴングが鳴ってすぐに(多少は素手での攻防もあったか)お互い首を絞め合って、そのままリングの外へ転がり落ち、両者リングアウトであっけなく終了。
私はおおいに不満だった・・・。

 

さて、この試合恨みのある者同士が戦ったわけだが、普通こういった者同士をわざわざ戦わせるのは、両者正々堂々戦って(悪役レスラーなので反則攻撃はするが)恨みや不満をスッキリ解決させるためだ。
それなのに「恨みを遺す試合→遺恨試合」を謳っているのは一体どういう了見か。
いがみ合いの決着をつけたり、抗争を解決したりするために試合を組むのではないのか。
アントニオ猪木が特別にレフェリーを務めるのは何のためか。
それとも新日は、恨み合っている者同士なら凄惨な試合をするはずだから、さらに遺恨が深くなると思ったのだろうか。
それなら、上田馬之助は真剣のままで良かったではないか。

 

さらに、遺恨とは『忘れがたい深いうらみ。宿怨(しゅくえん)』(デジタル大辞泉)とあり、用例として『遺恨を晴らす』『遺恨試合』とある。
例えば野球だと「デッドボールで両軍入り乱れての乱闘となり遺恨試合となった」という使い方ができよう。
この文をよくよく読んでみると、両軍入り乱れての乱闘(原因)があり、これを起因として恨みが発生し、その恨みを解消しないまま試合が終了した結果「遺恨試合」になったと解釈できる。

つまり、遺恨試合になるかどうかは試合が終わったあとに決まるのだ。

原因→恨み→遺恨試合という時系列がはっきりしているわけだ。

それなのに新日は試合前に「遺恨試合!!」と銘打っている。

時系列崩壊。

先取り感覚甚だしいとはこのことだ。

 

このように言葉の用法に問題はあるものの、「遺恨試合!!」と聞くとなんだかおどろおどろしい感じがして興奮してしまう。
凶器攻撃、噛みつき、流血・・・考えただけでワクワクしてしまう!

やはり遺恨試合は必要だ。


プロレスだもの(みつを)